自己破産は、多額の借金を帳消しにすることが可能な債務整理手続きのひとつです。
しかし、「自己破産するとすべてを失ってしまう」という誤ったイメージがあるためか、「自己破産だけはしたくない」という方もいらっしゃいます。
一方では、安易に自己破産の申立てをしたために、思わぬデメリットが生じてしまうケースも少なくありません。
この記事では、自己破産のメリットとデメリットを具体的にご紹介します。
自己破産するとどうなるのかを正しく知ることで、ご自身の状況に合った最適な解決方法を選べるようになることでしょう。
目次
自己破産をする4つのメリット
自己破産をすることで得られるメリットは、以下の4つです。
借金の返済義務がすべてなくなる
自己破産は「支払いができないこと」を裁判所に認めてもらう手続きです。
これが認められると、後でご説明する「免責不許可事由」がない限り、裁判所の決定によって借金の返済義務がすべて免除されます。この決定のことを「免責許可決定」といいます。
どのように多額の借金を抱えていても、免責許可決定を受ければ返済する必要がなくなるのです。
取り立てや強制執行が止まる
裁判所に自己破産の申し立てをして「破産手続開始決定」が出ると、債権者からの取り立てや強制執行が止まります。
これは、債権者が破産手続き外で権利を行使することが禁止されることによって得られるメリットです。
既に給料や預貯金口座などを差し押さえられていても、破産手続開始決定が出た後は差し押さえが中止されます。
ある程度の財産は残せる
自己破産をしても、すべての財産を失うわけではありません。以下のものは、「自由財産」として手元に残せます。
- 99万円以下の現金
- 現金以外の財産で評価額20万円以下のもの
- 生活に必要なもの(食料や燃料、衣服、寝具、家具など)
- 仏像や位牌など祭祀のための財産
この他にも、個別の事情に応じて必要性が認められる場合には、裁判所に「自由財産拡張の申立て」をすることで財産を残せる可能性があります。
例えば、公共交通機関の便が乏しい地域で、通勤や通院のために必要な自動車の保有が認められるケースも少なくありません。
基本的に生活への支障は少ない
誤解される方が多いですが、自己破産をしても基本的に生活への支障は少ないです。
自己破産をしたことが戸籍や住民票に記載されるわけではありませんし、選挙権も失いません。
年金や生活保護は、自己破産をしても受給できます。
後でご説明する一部の職業や資格を除いて、仕事を辞める必要もありません。
自己破産をすれば、基本的には今までどおりの生活を維持したまま、借金の返済義務をすべて免除してもらえます。
自己破産をする9つのデメリット
自己破産をする際に注意が必要なデメリットは、以下の9つです。数が多いと感じられるかもしれませんが、人によっては気にする必要がないものもあります。
高価な財産は処分される
自己破産をすると、「99万円以下の現金」と「評価額20万円以下の財産」を除く財産は基本的に処分され、債権者への配当などに充てられます。
そのため、住宅や自動車、生命保険などの高価な財産は失うことが多いです。
5~7年は新たな借入ができない
自己破産をした事実は、金融機関等が加盟する信用情報機関に事故情報として登録されます。その影響で、5~7年は新たな借入ができなくなります。
俗に「ブラックリスト」と呼ばれるものは、この状態のことを指しています。
5~7年の間はクレジットカードや各種ローンも利用できず、他人の借金の保証人にもなれません。携帯電話やスマートフォンの端末の分割購入ができないことにも注意が必要です。
保証人に迷惑がかかることがある
保証人がいる場合は、主債務者が自己破産をすると保証人がその借金を返済しなければなりません。
これは、自己破産を申し立てる際に、すべての借金を裁判所に申告する必要があることから生じるデメリットです。
保証人が返済できない場合は、保証人にも自己破産などの債務整理を検討してもらう必要性が生じるでしょう。
免責不許可事由があると借金が免除されない
免責不許可事由とは、自己破産をしても借金の返済義務が免除されない事由のことです。主な免責不許可事由として、次のようなものが挙げられます。
- 浪費やギャンブルのために借金をしたこと
- 一部の債権者にのみ優先的に返済したこと(偏頗弁済)
- 自己破産申立て前に財産の名義を変更したこと(財産隠し)
- クレジットカードで購入した商品を不利な条件で換金したこと(現金化)
- 裁判所に虚偽の説明をしたこと
ただし、免責不許可事由があっても状況によっては、裁判所の判断で免責が許可されることもあります。このことを「裁量免責」といいます。
免責されない債務もある
以下のような債務は「非免責債務」と呼ばれ、そもそも自己破産による免責の対象にはなりません。
- 税金や社会保険料の支払い義務
- 損害賠償義務のうち一定の条件を満たすもの
- 婚姻費用や養育費の負担義務
- 従業員への給与の支払い義務や預り金の返還義務
- 自己破産手続きで裁判所に申告しなかった借金などの債務
- 罰金の支払い義務
管財事件になると高額の費用がかかる
管財事件とは、破産者の財産を処分したり、免責不許可事由がないか詳しく調べたりなどする必要がある場合に、破産管財人が選任される破産事件のことです。
破産管財人への報酬など管財手続きに必要な費用は、破産者が負担しなければなりません。そのため、通常の自己破産の申立て費用とは別に、少なくとも30万円以上の費用を用意する必要があります。
一部の職業や資格に制限がかかる
自己破産の手続き中は、以下の職業や資格に制限がかかるため、仕事を辞めたり休職したりしなければならないこともあります。
- 税理士や宅地建物取引士など士業の資格
- 保険の外交員
- 警備員
- 旅行業務取扱管理者
- 建設業者
- 古物商 など
ただし、免責許可決定が確定すると復権し、以上の制限は解除されます。その後はどのような職業にも就くことが可能です。
旅行や引っ越しが制限されることがある
自己破産の手続き中に3泊以上の宿泊を伴う移動をする際には、裁判所の許可が必要となります。そのため、旅行や引っ越しが制限されることがあります。
仕事上の出張などは許可される可能性が高いですが、娯楽目的の旅行は自己破産手続きが終了するまで控えた方がよいでしょう。
この制限も、免責許可決定が確定すると解除されます。
官報に掲載される
自己破産をすると、官報という政府の日刊紙に氏名や住所が掲載され、全国に向けて公表されてしまいます。
もっとも、一般の人が官報を見ることはほとんどありません。したがって、官報に掲載されたことが原因で周囲の人に自己破産したことを知られることはほとんどないでしょう。
自己破産をすべきか悩んだら誰に相談すべき?
自己破産すべきかどうかで悩んだら、弁護士へのご相談をおすすめします。
借金問題を解決に導いてきた経験が豊富な弁護士は、自己破産を含む債務整理の手続きを熟知しています。
ご自身の状況を弁護士に詳しく伝えれば、自己破産に適しているかどうかを的確に判断してもらうことが可能です。場合によっては、任意整理や個人再生など、より適切な解決方法に導いてもらえることもあります。
弁護士法人 山本総合法律事務所では、年間700件を超える借金問題のご相談が寄せられており、経験豊富な弁護士が解決まで親身にサポートしています。
多額の借金を抱え、自己破産をするとどうなるのかが気になる方は、債務整理について専門的な知識と経験を有する弁護士法人山本総合法律事務所へお気軽にご相談ください。