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免責不許可事由とは

2024.10.07
解決策

自己破産の申し立てをして、裁判所から免責許可決定を受ければ、借金の返済義務がなくなります。しかし、破産法では「免責不許可事由」を定めていますので、免責不許可事由に該当する事情がある場合には、原則として免責を受けることができません。

免責不許可事由の有無によって選択すべき債務整理の方法が変わりますので、どのようなケースが免責不許可事由にあたるのかをしっかりと押さえておきましょう。

今回は、自己破産における免責不許可事由についてわかりやすく解説します。

免責不許可事由とは

免責不許可事由とは、自己破産をしても免責が認められない事情のことをいいます。破産法では、後述するような11の免責不許可事由を定めており、これらに該当する事情がある場合には、原則として免責は認められません。

免責が得られなければ借金の返済義務はなくなりませんので、自己破産の申し立てをしようと考えている方にとっては、免責不許可事由に該当する事情があるかどうかが重要なポイントになります。

【参考】国が認めた借金救済制度とは?

免責不許可事由に該当する11のケース

免責不許可事由に該当する11のケース

では、どのような事情が免責不許可事由として定められているのでしょうか。以下では、破産法が定める11の免責不許可事由を紹介します。

不当に財産を減少させる

自己破産の手続き前や手続き中に、債権者への配当の原資となる財産を隠したり、第三者に贈与するなどの行為は、免責不許可事由に該当します。

不当に債務を負担する

違法な高金利でヤミ金からお金を借りる行為、クレジットカードのショッピング枠で購入した商品を換金する行為などは、免責不許可事由に該当します。

債権者を平等に扱わない

破産法ではすべての債権者を平等に扱うことが求められています。特定の債権者のみに弁済するなどの行為は「偏波弁済」として禁止されており、免責不許可事由に該当します。

浪費やギャンブルにより借金をする

収入に見合わないような高額な浪費やギャンブルによって多額の借金を背負う行為は、免責不許可事由に該当します。

相手を騙して信用取引をする

借金を返済できない状況にあるにもかかわらず、収入や借入額などを偽って借金をする行為は、免責不許可事由に該当します。

帳簿など業務や財産に関する書類を隠す

売上や所得をごまかすために確定申告書などの書類を隠したり、偽造するなどの行為は、免責不許可事由に該当します。

虚偽の債権者名簿を提出する

自己破産の申し立ての際には、裁判所に債権者名簿の提出が必要になります。虚偽の債権者名簿が提出されると、配当を受けられない債権者が生じたり、特定の債権者のみ有利に扱うなどの不公平な事態が生じてしまいます。そのため、虚偽の債権者名簿を提出する行為は、免責不許可事由に該当します。

説明を拒否したり虚偽の説明をする

破産者は、破産管財人の調査に対して誠実に対応する義務があります。破産管財人による調査に対して、説明を拒否したり、虚偽の説明をする行為は、免責不許可事由に該当します。

管財業務を妨害する

自己破産の手続きでは、破産管財人が選任され、免責不許可事由の調査や破産者の財産の換価・処分、債権者への配当といった管財業務を行います。

このような破産管財人による管財業務を妨害する行為は、免責不許可事由に該当します。

過去7年以内に免責などを受けている

過去7年以内に以下の手続きをしたことがある場合には、免責不許可事由に該当します。

  • 自己破産における免責決定
  • 給与所得者等再生における認可決定
  • 小規模個人足性におけるハードシップ免責

自己破産手続きに協力しない

破産者には、破産法上さまざまな義務が課されています。破産手続きに非協力的な態度を示すことは、破産法上の義務違反行為にあたりますので、免責不許可事由に該当します。

【参考】自己破産をするメリット・デメリット

免責不許可事由にあたってしまった場合に借金問題を解決する方法

解決策

免責不許可事由に該当する事情がある場合には、どのような方法で借金問題を解決すればよいのでしょうか。

裁量免責

免責不許可事由がある場合、自己破産をしても、原則として免責は許可されません。しかし、例外的に「裁量免責」により免責が許可される可能性もあります。

裁量免責とは、免責不許可事由に該当する事情がある場合であっても、裁判所がさまざまな事情を考慮して、免責を認める制度をいいます。たとえば、ギャンブルや浪費による借金がある場合には免責不許可事由にあたりますが、ギャンブルや浪費による借金が高額ではなく、現在はギャンブルや浪費を辞めて健全な生活を送っているようなケースでは、裁量免責が認められる可能性が高いです。

実務では、免責不許可事由があったとしても裁量免責が得られるケースも多いため、悪質な事案でなければ自己破産を申し立ててみることも、選択肢の一つといえます。

他の債務整理の検討

免責不許可事由に該当する事情があり、裁量免責も難しいといえる場合には、自己破産以外の債務整理を検討する必要があります。自己破産以外に選択できる手段としては、任意整理と個人再生の2つがあります。

自己破産をするほどの借金を抱えている場合には、任意整理では借金問題の解決は困難ですので、個人再生を選択するケースが多いでしょう。個人再生は、借金総額を大幅に減額し、原則3年、最長5年の期間で分割返済していく方法です。個人再生の手続きでは、自己破産のような免責不許可事由はないため、ギャンブルや浪費が借金の原因だったとしても問題ありません。

【参考】自己破産中にやってはいけないこと

借金問題を弁護士に相談すべき理由

理由

借金問題でお困りの方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

最適な債務整理の方法を提案してもらえる

債務整理には、自己破産、個人再生、任意整理という3つの方法があります。それぞれの方法には、メリットだけでなくデメリットもありますので借金問題を解決するには、状況に応じて最適な方法を選択することが重要です。

弁護士であれば債務者の収支状況、負債総額、資産内容などを踏まえて最適な債務整理の方法をアドバイスすることができますので、まずは弁護士に相談するようにしましょう。

免責不許可事由に該当するかどうか判断できる

自己破産を選択する際に重要になるのが、免責不許可事由に該当する事情があるかどうかです。破産法では、免責不許可事由として11のケースを定めていますが、それらを正確に理解するためには法的知識と経験が不可欠となります。

免責不許可事由の有無によって選択すべき方法が変わってきますので、正確に判断するためにも、弁護士に相談することが必要です。

裁量免責を受けられる可能性が高くなる

免責不許可事由に該当する事情があったとしても、裁量免責により借金の返済義務が免除される可能性があります。

裁量免責では、さまざまな事情が考慮されますが、債務整理に詳しい弁護士であれば、裁量免責の可能性を高める事情を熟知していますので、弁護士による適切なサポートを受けることで裁量免責の可能性を高めることができます。

【参考】

まとめ

弁護士一同

破産法上の免責不許可事由に該当する事情がある場合には、原則として免責を許可してもらうことはできません。しかし、裁量免責が受けられる可能性もありますので、すぐに諦めてしまうのではなく、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

借金問題でお困りの方は、山本総合法律事務所までお気軽にご相談ください。