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自己破産とは
自己破産は、裁判所へ破産申立を行い、裁判所や裁判所が選任する破産管財人の関与のもとで債権者への弁済や免責審理を行う法的手続です。
自己破産手続中に行ってはいけないことをしてしまうと、免責(借金を返さなくてもよくなること)が許可されないおそれがあります。
今回は、自己破産手続中に行ってはいけないことや自己破産による生活への影響をご紹介します。
自己破産中に行ってはいけないこと
新たな借金や換金行為
自己破産手続中はもちろん、自己破産手続の申し立てを決意した後は申立て前であっても借入はしてはいけません。
自己破産では免責が許可されれば借金を返さなくてもよくなります。
これを悪用し、免責されることを前提に行った借入は返済する意思なく又は返済できるだけの資力がないことを認識したうえで行った借入とみなされるおそれがあります。
このようなことをしてしまうと免責が許可されないばかりか、最悪の場合は詐欺罪等の犯罪に問われてしまいます。
また、クレジットカードも後払いとなるため形式的には借金ですので注意しましょう。
特に、クレジットカードで高額の商品を購入し、直ちに質屋などで売却することで現金を入手すること(クレジットカードの現金化、換金行為)もNGです。
借金に分類される以上は、前述のとおり行ってはなりません。
無駄遣い・ギャンブル
日常生活を送るうえで必要のない無駄遣いやギャンブルをしていると、免責が許可されないおそれがあります。
無駄遣いとは、例えば、ブランド品の購入、風俗店の利用、飲食店の過度な利用などです。
ギャンブルとは、例えば、パチンコ、スロット、競馬、競艇、競輪などです。
破産手続中はもちろん、破産手続の申立て前であってもこのような行為はNGです。
無駄遣いやギャンブルで収支を悪化させた人は同じ理由で借入を繰り返すおそれが高いとみなされ、免責が許可されない可能性があります。
無駄遣いやギャンブルをしてしまっていたのであれば、正直に裁判所へ報告し、そのうえで改善を図っていくことになります。
当然ですが、本当は無駄遣いやギャンブルをしているのに、「していない」と虚偽を述べることは絶対にあってはなりません。
【参考】国が認めた借金救済制度とは?
一部の債権者への弁済(偏頗弁済)
自己破産の手続が開始されると、自らの判断で勝手に債権者に対して弁済してはならなくなります。
破産者の任意の弁済ではなく、法的手続の中で平等に弁済されることになるからです。
そのため、自分の判断で一部の債権者へ弁済してはなりません。
友人、家族、職場からの借入も例外ではありません。
お世話になっているから、迷惑をかけたくないからといった理由で関係性の近い債権者へ弁済したくなる気持ちはあるでしょうが、一部の債権者への弁済は偏波弁済と呼ばれ、免責が許可されない事由の1つとされています。
財産を隠す
破産手続が開始されると、基本的に、自己破産者の財産は現金化され、債権者への弁済に充てられます。
そのため、自分の財産を隠すことは免責不許可事由として定められているため行ってはなりません。
意図的に隠すことはもちろんですが、意図的でなくとも財産隠しと評価されてしまうと免責が許可されないおそれがあります。
特に、口座から多額の現金を引き出す、資産価値の高い物を第三者へ預ける、不動産等の名義を第三者へ変更するといった行為は財産隠しとみなされるおそれが高いので注意しましょう。
債権者を隠す
財産隠しと共通しますが、自己破産の法的手続の中で債権者へ平等に弁済されることになりますから、債権者を隠すこともNGです。
家族や友人であっても、債権者として報告しなければなりません。
裁判所や破産管財人への虚偽、不協力
自己破産手続が開始されると、裁判所や管財人から指示を受ける機会が増えます。
裁判所や管財人の事務所に足を運ばなければならない場面もあるでしょう。
面倒でも、裁判所や管財人の指示に従い、必要な調査には協力しなければなりません。
ここで調査に協力しなかったり、虚偽を述べたりしてしまうと、免責が許可されないおそれがあります。
自己破産手続中にできなくなること
財産の処分に制限がかかる
基本的に、自己破産者の資産は破産手続の中で債権者への弁済に充てるために現金化されるため、財産を自由に処分できなくなります。
例外的に、自由財産と認められた財産は自由に処分できます。
自由財産拡張という手続もあるので、破産手続開始後も引き続き使用・処分したい財産がある場合は忘れずにこの手続を行っておきましょう。
就けなくなる職業がある
自己破産の手続が開始されると、警備員、生命保険募集人、貸金業者や士業(弁護士、税理士、公認会計士、宅地建物取引士等)や会社の取締役等の職業には就けなくなります。
他人の財産を預かって管理する業務を担う職業には就けなくなる、ということです。
ここに挙げた職業に就きたい方や就いている方は、自己破産を行うに当たり注意が必要です。
引っ越しや旅行ができなくなる
自己破産の手続が管財事件へ移行した場合、手続中は引っ越しや旅行(=現在の居住地を離れること)が制限されます。
どうしても引っ越しや旅行をしたい場合は、裁判所にその旨を申し立て、裁判所の許可を得なければなりません。
郵便物を自分で受け取れない
これも自己破産が管財事件へ移行した場合ですが、自己破産者宛の郵便物は全て破産管財人宛に送付されることになるので、郵便物を自分で受け取れなくなります。
郵便物の中に自己破産の手続に影響を及ぼすおそれがあるものがないか、管財人がチェックする必要があるからです。
郵便物から、新たな債権者や負債が発見されるケースもあります。
郵便物は、管財人が内容をチェックし問題ないと判断すれば、管財人から自己破産者へ渡されます。
【参考】自己破産後の生活について
【参考】自転車操業で借金がかさむ…多重債務から抜け出す方法
自己破産をすることによるその他の影響
自己破産すると、5年~10年の間は、自動車や家を購入する際のローンが組めなくなります。
この点は自己破産のデメリットですが、逆にいえば、日常生活を送るうえでの大きなデメリットはこの点くらいです。
選挙権や年金受給権を失うことはありませんし、就業先から解雇されることも想定しにくいです。
自己破産の手続が終わった後は旅行も自由です。
自己破産したことは官報に掲載されますが、通常は官報を見る人はそれほど多くありませんから、自己破産したことが世間に広まる心配もありません。
【参考】ブラックリスト状態になるとどうなる?
【参考】自己破産をお考えの方へ
自己破産をお考えの場合、まずは弁護士にご相談ください
自己破産を行うためには、裁判所へ提出するための書類を作成したり、必要な資料を用意したりと、準備のために膨大な時間と労力が要求されます。
また、今回紹介したように自己破産中に行ってはならないこともあるため、自己破産の流れや仕組みを理解したうえで手続を進めなければなりません。
弁護士に相談すれば、自己破産を円滑かつスピーディに進めるための効果的なサポートを受けられるでしょう。
当事務所には数多くの自己破産の解決実績があり、たしかな経験とノウハウを持つ専門の弁護士がご相談をお受けします。まずはお気軽にお問合せください。